寝坊すると課金される目覚ましアプリを作っている話。

メザミー というアプリを作っている。週末起業というやつだ。ちなみに無報酬。0円。

Web アプリ、 API サーバー、 AWS インフラ、 iOS アプリ、開発関連についてほぼ全部自分 1 人でやっている。

Git の履歴を見返してみると、最初のコミットは 2019/3/31 と 2 年ほど前だったようだ。

寝坊すると課金…?お前は何を言っているんだ?

分かる。僕も最初に話を聞いたとき同じように思った。

このアイデアを話していた現 CEO の岡崎と僕は中高の同級生だった。在学中に仲良かったかというと特段そうでもなかったというか、刺青を入れてる変なヤツがいる、くらいの認識だった。

その岡崎という人間は退職代行業界というニッチな業界を創出したことで一部界隈では有名人なのだが、まぁそんなこともあって胡散臭さを感じる方が真っ当な気はしている。

しかし話をよくよく聞くと、別に誰かを騙そうとかそういう悪意がある訳でもなく、二度寝しないことにフォーカスして考えられてるなと認識を改め、そんなら作ってみるかとプロダクト開発を始めたのであった。

決して毎週の様に飯をご馳走され続けた結果懐柔された訳ではないです。

どうすれば二度寝を防げるのか?

単純に外に出る。最強である。

散歩して帰ってきたら流石に二度寝はしないでしょ、ということらしい。正論すぎてぐうの音も出ない。

幸いスマホ全盛な世の中なので、位置情報を扱ったアプリを作ることができる。

どうやって外に出ないといけない状況を作る?

タイムリミットまでに外に出ないと課金される。最強である。

金額は自分で決められるようになっていて、覚悟に対して自ら値段を付けるという構造になっている。

この仕組みを実現するため、決済手段としてクレジットカードを登録することになる。アプリ内課金などの前払い式の手段ではサービス運営側の任意のタイミングで決済を走らせることが出来ないので現状ではクレジットカードの登録が必須となっている。

クレジットカード必須、利用のハードルが高くない?

それはそう。

そもそも早起きや二度寝防止のためだけに得体のよくわからんサービスにクレジットカードを登録するか?という心理的ハードルがあることは否めない。

技術的な話をすると、課金の実装に Stripe を利用しているためサービス運営側はカード番号を知ろうにも物理的に知り得ないような仕組みになっていて、サービス運営側としてもユーザー側としてもお互いにそこそこ安全ではあるのだが、ユーザーからすればそうは見えない訳で…。

それとサービスの特性上、寝る場所を指定することになる。これはかなりセンシティブな情報だ。

そのため各種 SNS 連携など、個人の特定に繋がりそうな要素はなるだけ排除している。流石に連絡が取れないと不味い場面はあるのでアカウント作成にはメールアドレスが必須だが、メールアドレスも最近は匿名化が簡単にできるようになっているので、そういった機能を利用してもらうのが良いと個人的には思っている。

様々なハードルを乗り越えてもらって、実際の画面はこんな感じ。

もし御所にお住まいの方がお使いになられるとしたら

デモ

このようになると思われる。

開発者として実際に使ってる?

言い出しっぺで CEO の岡崎はほぼ毎日使っているようだ。メザミーのリリース自体は 2021/4/22 で、 iPhone アプリ のリリースは 2021/9/21 なので、かれこれもう 1 年以上使い続けているっぽい。偉い。

僕自身もたまに使っている。

自分で作っておいてなんだけど、圧が強すぎて「覚悟を決める」スライドをするときは割と躊躇する。起床に失敗しても最終的に会社の売り上げになるとは言え Stripe に取られる数%の手数料ですら惜しいと思ってしまう程度にはケチなので…。

こんなもんで効果あるの?

直観的には「ありそうだな」くらいの感覚でプロダクトを作っているが、本当にそうかというと人によりそうなので、使ってみて判断して欲しいという感じになる。

僕自身ずっと夜型の睡眠サイクルと不眠に悩んでいて、かれこれ数年心療内科の先生とゾルピデムにお世話になっている。あまり表立って言うことでもないが…。

診察の中で先生から「寝る時間を早めるか、無理矢理起きるか、どっちかっていうと無理矢理早起きする方が先だよ」とか「予定作って外に出ちゃった方がいいよ」みたいなアドバイスは度々受けており、確かにあながち間違いでもないなとぼんやり思っている。

心療内科の先生がそう言ったから医学的な根拠がある!!とかそういう話ではないですよ、念の為。

ところで儲かってるの?

これが全く儲かってない。

「どうすれば早起きできるか」とか「いかに二度寝をしないか」とか色々と言っているが、結局は「覚悟を決めた」段階でほぼ成功しているのであった。

ニッチなアプリなためそんなに多くの人に使われている訳ではないが、起床成功率は極めて高い。刺さる人には刺さる、といった感じだろうか。

ユーザーに価値を届けるという意味では成功していると思う。

言うは易く行うは難し。

アイデアに価値はない、とよく言われる。実行してナンボだと。まぁ確かにそういう側面はある。それはそうとしてプロダクト開発は大変なんです…。辛いことの方が圧倒的に多い。

自分にとって自明なことでも相手にとっては非自明なので、コミュニケーションは本質的に難しいし、

人間にとって自明なことでも機械にとっては非自明なので、プログラミングは本質的に難しい。

その辺のギャップは中々埋まらない気がしている。

よくエンジニア中途採用の条件で「○○年以上の経験」みたいな項目が見られるが、実際に何年の経験があるかというより、この辺の現実的なギャップを肌感覚として認識できているかとか、面構えが違うかとか、実際には泥臭い作業を淡々をやっていくガッツがあるかとか、そういうところなんですよね。辛い話だ。

余談

僕自身は iOS アプリをネイティブで UIKit の作法に則って書くのが一番好きなので、 iOS アプリは割と素直に作っている。結果として iPad でも M1 Mac でもちゃんと動作している。素直に作るとバイナリのサイズも大きくならなくて良い。

UIKit は歴史に揉まれており十分に洗練されている。余計なライブラリは極力使わない方が良い。

余談その2

ところで Apple のアプリ審査は課金絡みに関してのみ異様に厳しい。メザミーも一回リジェクトされたが、「これは寝坊しなければ 0 円なのでデジタルコンテンツにあたらない」と強気の返信をしたら通った。割とそんなもん。

締め

早起きするとか、二度寝しないとか、覚悟を強めるお手伝いくらいはできるアプリに仕上がっていると思うので、刺さっちゃったら使ってみてください。

バグ踏んだり、なんか変なところ見付けたら連絡ください。感謝と共に直します。

Web サイト: https://mezamee.com

iOS アプリ: https://apps.apple.com/app/id1577087517